涙色に「またね」を乗せて

「……涙衣が絵をやめたのは僕の為だって、最初から分かってた」



憂うように目を伏せて、湊がぽつり呟く。頬に落ちた睫毛の影が、いやに幽艶で幻想的だった。




「でも、止められなかった。このまま目を瞑っていれば、救われるような気がしたから。それが、最善だと信じ込もうとした」



声は酷く平淡で、言葉は慎重に選び抜かれている。その全てに悲哀が込められていると感じるのは、きっと思い過ごしじゃない。




「思えば、僕が気付いていないだけで、涙衣は他にも沢山のものを捨てたかもしれない。涙衣が流す血を啜って、ずっと背中に守って貰って、このままじゃ駄目だと思った」



眺めていた絵から振り返って、薄く微笑う。碧く輝く二つの鏡に、今にも泣き出しそうな私が映っていた。





「ちゃんと、言葉にして言うね。この先ずっと、他の誰より大切な涙衣を守っていたい。僕の隣で、絵を描いていて欲しい。いつからかは覚えてないけど、涙衣が好きだ」




壊れ物を扱うかのようにそっと手を取って、まるで童話に出てくる王子様みたいな笑顔で、私にだけ囁いた。