涙色に「またね」を乗せて

「湊がね、私に梓さんの面影を重ねていたことは、薄々気付いてたの」


ふとした瞬間に感じる視線。苦痛と切望が入り交じった声無き悲鳴は特に、絵を描いている時に注がれた。

無理もない。私が絵を描き始めたのは梓さんの影響だし、物心ついた頃から一緒に居た彼女に憧れ、感化されてきた私に亡き姉の姿を重ねるのは、きっと当然の反応だ。

だから私は筆を折った。その傷が少しでも癒えてくれるのならと、半身をもいで差し出した。そして、恋心に何重もの鍵を掛けた。困らせると分かっていたから。


けれど、あんなにも厳重だった鍵は壊れ、再び筆を取ることを選んだ。



「だから、湊が傷付くくらいなら絵なんか描かなくてもいいやって、絵が無くたって生きていけるって、そう思ってたんだけど、やっぱり駄目だったみたい」


私は、私が思うよりずっと欲張りだった。



この関係性を壊したくはないけれど、他の女の子と仲良くされるのは嫌。


湊を傷付けたくないけれど、どうしても絵を捨てたくない。



これじゃあまるで駄々っ子だ。あれが欲しいこれも欲しい。スーパーで泣き喚く子供の方がまだ謙虚だと言える。




それでも、こんな私が伸ばした手を、貴方が取ってくれるのなら。



「こんな我儘な私でいいなら、湊の隣に居させてください」


一緒に未来を歩んでいきたい。

貴方の傷跡すらも、まるごと愛していたい。



それが、悩み抜いた末に出した私の答えだ。