骨だけになったチキンの皿を食洗機に入れて、冷蔵庫からケーキを取り出す。
大木の枝を連想させる、湊からリクエストされたブッシュドノエル。チョコレートクリームと粉砂糖でコーティングされた表面に、イチゴやらサンタの飾りが乗せられている。
適当に境界線を決め、真っ二つに切ってやろうと包丁をケーキの上に構えると、「それだと右の方が大きい」と横槍が飛んだ。
包丁を右にずらすと今度は「行き過ぎ」だの「チョコプレートは僕が食べたい」だのと一々文句を言ってくる。
お前の体を真っ二つにしてやろうかという文句をぐっと堪え、やっと湊が納得してくれる形で切れたケーキを紅茶と一緒にテーブルに並べる。
有名店のケーキというだけあって、ブッシュドノエルは最高の味わいだった。
チョコレート風味のスポンジはふわふわと舌を包み込み、表面も見えない程に塗りたくられたクリームも上品かつ濃厚な風味を主張して、上に飾られた苺の酸味が二重コンボのチョコの甘味を程よく調和している。
決してくどいだけじゃない、繊細で隙の無い甘い味。
このケーキなら毎日いけると、割と心の底から思った。甘いは正義。唯一の原点は、これが期間限定ということだ。
誰か、ブッシュドノエルは毎日販売するべきという論文を書いてくれないだろうか。次のノーベル平和賞受賞者はきっとその人だ。
自然とフォークが進んでいき、皿の上の桃源郷はその面積を減らしていく。最後の一口を食べ終えて、残っていた紅茶を優雅に啜り上げると、リビングに静寂が訪れた。
「…………」
「…………」
お互いにだんまり。今まで無理に忘れようとしていたツケが訪れたのか、胃がきりきりと痛くなった。
「あのさっ」
先に口を開いたのは、私の方だった。
膝の上で己の拳を握り締め、そこで初めえ、薄っすらと汗ばんでいることに気が付いた。さっき紅茶で潤した筈の喉は、何故だか酷く乾いていた。
修学旅行でのことに対して、何も考えていなかった訳では無い。けれど、悩み抜いて出した答えに、私は胸を張れなかった。
それでも、もし受け入れてくれるのなら、自信を持って返事をしたい。
「見せたいものがあるの」
大木の枝を連想させる、湊からリクエストされたブッシュドノエル。チョコレートクリームと粉砂糖でコーティングされた表面に、イチゴやらサンタの飾りが乗せられている。
適当に境界線を決め、真っ二つに切ってやろうと包丁をケーキの上に構えると、「それだと右の方が大きい」と横槍が飛んだ。
包丁を右にずらすと今度は「行き過ぎ」だの「チョコプレートは僕が食べたい」だのと一々文句を言ってくる。
お前の体を真っ二つにしてやろうかという文句をぐっと堪え、やっと湊が納得してくれる形で切れたケーキを紅茶と一緒にテーブルに並べる。
有名店のケーキというだけあって、ブッシュドノエルは最高の味わいだった。
チョコレート風味のスポンジはふわふわと舌を包み込み、表面も見えない程に塗りたくられたクリームも上品かつ濃厚な風味を主張して、上に飾られた苺の酸味が二重コンボのチョコの甘味を程よく調和している。
決してくどいだけじゃない、繊細で隙の無い甘い味。
このケーキなら毎日いけると、割と心の底から思った。甘いは正義。唯一の原点は、これが期間限定ということだ。
誰か、ブッシュドノエルは毎日販売するべきという論文を書いてくれないだろうか。次のノーベル平和賞受賞者はきっとその人だ。
自然とフォークが進んでいき、皿の上の桃源郷はその面積を減らしていく。最後の一口を食べ終えて、残っていた紅茶を優雅に啜り上げると、リビングに静寂が訪れた。
「…………」
「…………」
お互いにだんまり。今まで無理に忘れようとしていたツケが訪れたのか、胃がきりきりと痛くなった。
「あのさっ」
先に口を開いたのは、私の方だった。
膝の上で己の拳を握り締め、そこで初めえ、薄っすらと汗ばんでいることに気が付いた。さっき紅茶で潤した筈の喉は、何故だか酷く乾いていた。
修学旅行でのことに対して、何も考えていなかった訳では無い。けれど、悩み抜いて出した答えに、私は胸を張れなかった。
それでも、もし受け入れてくれるのなら、自信を持って返事をしたい。
「見せたいものがあるの」

