涙色に「またね」を乗せて

「メリークリスマス! 乾杯!」



シャンメリーをたっぷりと注いだグラスを鳴らし、熟成された赤ワインのように芳醇な深紅の炭酸を優雅に流し込む。みっともなく一気飲みするなんて無粋な真似は、この聖夜には相応しくない。

小さく弾ける泡と共に、喉をくすぐる甘美な味わい。もしこれが本当にお酒だったなら、格好つけてアペリティフとでも呼んでいた。


「せっかくだから、クリスマスツリーでも飾ればよかったかな」

「え、それもっと早く言ってよ」

「まぁ、来年やればいいじゃん」


こんがり焼かれたローストチキンの中には細かく切った野菜が詰められていて、見た目よりずっとボリューム満点だ。薄く切ったバケットも用意しておいたけれど、こちらはろくに手も付けられず、明日の朝食になるだろう。

二人だけのクリスマス。普段は食べない豪華な料理を並べ談笑に興じるリビングには、友達と馬鹿騒ぎする時の賑やかさも、神の誕生日に相応しい神聖さも、何もかもが足りていない。


一見すると、ちょっと小洒落ただけの休日。お互いに、プレゼントすら用意していない。安息に気持ち程度の特別を加えただけの一日を、今まで何度も迎えてきた。


ロマンチックなクリスマスデートだのを経験してみたいという思いが全く無かったと言えば嘘になるが、自分にこれ以上のものを望む資格が無いと思っていたのも確かだ。