涙色に「またね」を乗せて

というか、これって結構やばくないか。



消灯時間にも関わらずロビーで湊と駄弁っているのを教師連中に見られたら、マジで一晩中正座させられる。今まで都市伝説でしかないと鼻で笑っていたことを、この身で体験させられてしまう。


「バレたらめっちゃ怒られるよ。さっさと戻ろ」

非常口と自販機の明かりを頼りに部屋に戻ろうとすると、腕が後ろに引っ張られた。


「何!?」


暗がりで、湊の顔はよく見えない。今この瞬間にも危機が迫っているというのに、一体なんの要件だ。

「修学旅行で告白する子、結構多いんだよね」

「そうだけど! 今それ必要!?」

苛立って抗議の声を上げると、腕を掴む力が強まり、ぐいっと体ごと引き寄せられた。


「わっ」


その拍子にバランスを崩して、肩が思いきりぶつかる。けれど衝撃を感じる間もなく、耳元に湊の顔が寄せられた。



「ーーーー」



力いっぱい腕を振りほどき、振り向きもせずにロビーを走り去る。


教師の目をかいくぐるのも忘れて廊下を全力疾走し、顔に集まる熱を夢中で消し去った。


だって、そうでもしないと、囁かれた言葉に理性ごと絡め取られてしまいそうだったから。


きっと、さっきのあれは、聞き間違いか冗談だ。








「もし僕が涙衣と幼馴染以上の関係になりたいって言ったら、どうする?」




あんなこと、冗談でもない限り、湊が言う筈など無いのだから。