涙色に「またね」を乗せて

「今日様子が変だったけど、何かあった?」


もし本当の理由を知ったら、彼は何と言うのだろう。


馬鹿馬鹿しいと嗤うだろうか。顔だけは無駄に恵まれたこいつのことだから、既に告白されたかもしれない。

女子の告白を受けるような奴には見えないけれど、何処の誰かも分からない、素直に想いを口に出来る女の子が少しだけ羨ましい。


「ね、知ってる? 修学旅行で告白する子、結構多いんだって」


だから、わざとこの話題を選んだのは、単なる好奇心だった。


「知らない。何で?」

「ムードとかの話じゃない? 修学旅行で二人きりになって告白なんて、少女漫画みたいじゃん」

「学年全員が同じところに居るんだから、誰かしらに聞かれてそうだけどね」

「あはっ、確かに」


この調子だと、告白はされていなさそうだ。

その事実に、何だか酷く安心した。


中身を全部飲み干して、空き缶を自販機横のゴミ箱に捨てる。そしてそれが合図になったかのように、ロビーの照明が落とされた。



「えっ、何? 停電?」

慌てて周囲を見回すも、自販機の明かりはついている。じゃあアレか? 心霊現象か?


「やばいよ涙衣」

スマホの画面に照らされて幽霊みたいな状態になった湊が、大してやばくなさそうな声で言う。

「消灯時間過ぎてる」

「嘘っ。もう?」

飽きもせずに繰り広げられる恋バナを回避すべく今日は温泉に入る時間を遅らせた為、余計に早く感じたのだろう。