「何飲むの?」
後ろから声をかけると、薄い肩がビクリと跳ね上がる。こうも露骨に驚く姿は普段滅多に拝めないので、心の中で大笑いした。実際に大笑いすると、この場合は強烈なデコピンが飛んでくる。
「メロンソーダ」
細い指がボタンを押し、緑色のポップなデザインの缶が落ちてくる。
湊が缶を開ける。プシュッという炭酸の抜ける音がして、それに感化されて私も小銭を投入し、何を買おうかとボタンの前で人差し指を彷徨わせた。
「うーん、ドクターペッパーにしようかな」
「趣味悪っ」
「うっさい」
割とマジで、全国のドクペ愛好家に謝って欲しい。
缶を開けて、薬草っぽい匂いのする液体を一気に流し込む。色々なネットサイトでこのドリンクは杏仁豆腐の味がすると謳われていて、いやいやそんな筈無いだろうと小学六年生の時に面白半分で手を出した。
初めて飲んだ得体の知れない飲み物は本当に杏仁豆腐の味がして、二十種類以上のフルーツフレーバー=杏仁豆腐という方程式が私の中で確立された。
私としては好きな飲み物ランキングトップファイブに入るくらい美味しく感じるけれど、どうやら好みが分かれるらしく、湊はあまりお気に召さないようだった。
ソファに座って、残りをちびちびと飲みながら体の熱を冷ます。杏仁豆腐と炭酸水を混ぜればこれと同じ味になるのではないかという、くだらない考察を交えながら。

