涙色に「またね」を乗せて

そして、修学旅行二日目。昨日聞いた話の所為か、至るところに恋のポーションが振り撒かれているような気がして、そわそわとむず痒さで落ち着かない。

他の生徒が沢山居るからそう感じてしまっているだけだと自分に言い聞かせたものの、自由行動になった後も、湊の顔を見る度に顔に熱が集まって、まともに目を合わせられなかった。

別に、私が告白する訳じゃないのに。

おかげさまで、せっかくの自由行動中の記憶はすっぽりと抜け落ちている。貴重な旅行期間だというのに、何だか損をした気分だ。


「涙衣ちゃん、なんだか様子が変だよ? どうしたの。寝不足?」

途中、穂花ちゃんに心配そうに顔を覗き込まれ、適当に誤魔化した。彼女とは部屋割りが違うから、あの話を知らないのだろう。

他の人達はというと、告白に見事成功したのか、やたらピンクとハートな甘ったるい空気をホテル中に充満させていた。

ラブラブオーラを全力で遮断して食事を胃に流し込み、温泉にじっくりと肩まで浸かる。湯けむりに告白の文字は蒸発されて、気分はさっぱりと晴れていった。

上機嫌で肩にタオルを掛け、ついでに鼻歌も歌いながら廊下を闊歩して湯上り気分を堪能していると、ロビーの自販機前に湊が立っているのが見えた。