涙色に「またね」を乗せて

ご満悦で部屋に戻ると、女子達は何故か前髪をいじったりやたらと身なりを整えていた。



「あ、涙衣!」


私が戻ってきたのに気付いた一人が、手鏡から顔を上げる。


「これから男子の部屋に遊びに行くんだけど、涙衣も行く?」

「んー、いいや」


そう? と短く返事して、私以外の女子は部屋から出て行った。

男子の部屋に行くだけなのにどうしてあんなに気合いを入れるのだろうという疑問は、未だ手の中で本領発揮を待っている木刀によりうやむやになった。

誰も居ないのをいいことに、木刀を振って侍ごっこに興じる。危うくベッド脇のランプにぶつけそうになって、侍ごっこは終了した。

以前歴史の授業で習った新選組。彼らがその名を京に轟かせたと言われている池田屋事件が起こった場所は、京都内の旅籠だと言われている。

彼らは戦闘中に、店のものを壊しそうになってひやりとしたことは無いのだろうか。それとも、命のやり取りの最中では、そんなことに構っている心の余裕は無いのか。

ベッドの上で大の字になって休息のありがたみを感じたり、明日の準備をしたりしていると、いつの間にか女子達は部屋に戻ってきていた。後十五分で消灯時間だが、それを律儀に守る気は毛頭無いらしい。