涙色に「またね」を乗せて

物々交換で手に入れた塩キャラメルを口の中で転がしながら、夢の住人と化した穂花ちゃんを起こさないよう静かにしおりのページを捲る。

しおり曰く、九時前には京都に到着するらしい。そしてその後は班行動。とはいえカフェやお土産屋さんは十時にならないと営業しないので、最初はどの班も寺社仏閣巡りと決めている。うちの班もそんなに感じだ。

キャベツ太郎を食べ終えて、窓からの風景を写真に収めたりもう一度地図を見返したりしているうちに、穂花ちゃんが目を覚ました。

その口に、可愛らしいピンク色をしたさくらんぼ餅を押し込む。


「……美味しい」


小さく飲み込んだ後に、まだ眠気の残る声で呟く。雛に餌付けしているような気持ちになったけれど、声に出すと拗ねるので、決して言葉にはしない。

彼女が起きてきたことで、さっきまで何となくする気が起きなかったカードゲームをやりたくなって、リュックの奥底からトランプのケースを引っ張り出す。


前方の男子二人にも声を掛けて、ババを一枚引き抜いてカードを適当に切る。四人に配り終わったら、錯乱あり、駆け引きありのババ抜き対決の始まりだ。


今のところ、私の手札にババは含まれていない。が、いつうっかりババを引いてしまうかは分からない。ババを手にした程度で顔色を変えるほど素直な人間ではないけれど、正直ババ抜きは心理戦と運ゲーだ。ポーカーフェイスを極めたところで、必ずしも勝利を掴めるとは限らない。


結論から言うと、一番先に上がったのは湊だった。二番目は穂花ちゃんで、その後は私と律樹の一騎打ち。それに私が勝利して、律樹が敗北の屈辱を味わうこととなった。


頭を抱えて嘆く律樹に大笑いし、その後も他クラスメートを巻き込んだ人狼ゲームやら何やらで大いに盛り上がり、京都への旅路はあっという間に終わっていた。