涙色に「またね」を乗せて


一位をキープしたまま湊にバトンを渡せたのは、もう奇跡に近いと思う。


最後の力を振り絞ってグラウンドの中央に移動し、砂の上に体育座りになる。本当なら今すぐにでも保健室に行った方がいいのだろうけれど、せめて湊が走る姿を見たかった。

私が縮めてしまった差を一気に引き離す湊は腹立たしいまでに格好よくて、声援を送る気力が残されていない代わりに足首を擦りながらその姿を眺めていた。

あっという間に湊がゴールし、彼を始めとしたリレー選手が応援席の皆と喜びを分かち合いハイタッチを交わすのを横目に見ながら、じくじくと熱を持ち始めた左足を引きずって保健室へと歩く。


たかが保健室までの短い道のりが、まるで永遠に続く地獄の道にさえ感じられた。


やっとの思いで辿り着きドアを開けると、保健室の先生がぎょっとしたような顔をした。

これは後から聞いたことだけど、その時の私はまるで、死にかけのネズミのように生気を失っていたらしい。

背もたれの無い少し硬いソファに腰掛け、先生の手によってテーピングを施され、氷嚢で患部を冷やされる。