涙色に「またね」を乗せて

パシンとバトンを受け取り、反対の手に持ち替えて一気に走り出す。練習した甲斐あって、バトンパスはスムーズに終えられた。

途端に浴びせられる声援の中に己の名前が混じって、そのおかげか沸々と湧き出る使命感がプレッシャーを上回って、必死になって1位の背中を追い掛ける。

たとえゾンビとの鬼ごっこが始まったとしても、こんなに本気で走らないのではないかと思うくらいに。

ひりひり乾いた喉も滴る汗もどうでもよくて、白いハチマキを巻いた一位との差が縮まって、ゼロになって追い越すと、クラスメートの歓声が耳をすり抜けた。

また二位に逆戻りしないよう疲れた足に鞭打って、更にスピードを上げようとしたのが災いしたらしい。



左足首に鈍い痛みが走り、次の一歩を踏み外しかけた。



本来ならば、そこで転ぶ予定だった。


体が傾く寸前にさっきまでのことがコマ送りで逆再生され、どうにか体勢を持ち直す。


捻った足首は痛むことには痛むことには痛むけれど、耐えられない程ではない。幸いにも元一位との差はそこそこに開いていて、多少スピードを落とした程度では追い抜かされる気配は見られなかった。

気合と根性で苦痛を包み隠し、額に脂汗を浮かべながら必死に走る。真っ白に染まる頭の中、走らなきゃと前を向く理由すらもろくに分からないまま。