涙色に「またね」を乗せて

朝っぱらから電子レンジの掃除をしていたら当然学校に間に合う筈もなく、フルマラソンよろしく通学路を全力疾走する。



が、一分未満でリタイアした。



どうせ急いだって遅刻は免れないのだ。だったら、ゆっくり行った方がいい。無駄な悪足掻きはしない。効率重視。それが私。


昨日穂花ちゃんと別れた辺りのところで、数メートル先を走っている律樹を見かけた。後ろから声をかけると、まるで叫ぶ人参でも見たかのような反応をされた。


「人の顔見て何だその反応は」


「だってお前か居るとか、ぜってー遅刻確定じゃねえか!」



失礼な。


抗議の声を上げようと口を開きかけた時、遥か遠くで、チャイムが鳴った。


ちょっと気まずい空気になり、口を噤む。「ほらやっぱり」という声は、そっと聞こえない振りをした。


「つか、あんた部活はどうしたよ。朝練あるんじゃないの?」

「今日は休み。お前は? ゲームでもして寝坊した?」

「それもあるけど、ちょっとお母さんがビックバン起こしちゃって」

「創造主かよ、お前の母ちゃん」