考えごとをしているうちに入場はとっくに終わってしまっていたらしく、参加者全員が位置についていた。
「位置について、よーい」パァンッ!というスターターピストルの音と同時に走者全員が走り出し、机の上の紙を無造作にひったくる。
この時点で律樹は一番乗りだったけれど、この競技においてそれが自動販売機の下に落ちている小銭程度の価値しか無いことは経験上よく知っている。大事なのはここから先、如何に素早くお題の品を手に入れゴールまで走るかだ。
当の本人はというと、髪を開いてすぐに目を見開き、何があったのか顔を赤らめて髪をグシャグシャと掻き毟り、けれどすぐに気を取り直したらしく、穂花ちゃんが声援を送るより早く私達がいる応援席まで走って来た。
「穂花! ハチマキ貸してくれ!」
穂花ちゃんの胸の前辺りに、パーにした右手の手のひらを上にした状態で差し出す。
「え。あっと、うん」
まさか自分に頼むとは思いもよらなかったのだろう。あたふたした彼女がハチマキを渡すと、互いの指先が触れ合った。
「悪い、サンキュ!」
空いている方の左手を振りながらゴールへと駆け出す律樹と、名残惜しそうにその後ろ姿を見送ったのち、慌てたように「ファ、ファイトー!」とありったけの声でエールを送った穂花ちゃん。これぞ青春。甘酸っぱい恋の匂い。羨ましくて胸焼けがする。
「位置について、よーい」パァンッ!というスターターピストルの音と同時に走者全員が走り出し、机の上の紙を無造作にひったくる。
この時点で律樹は一番乗りだったけれど、この競技においてそれが自動販売機の下に落ちている小銭程度の価値しか無いことは経験上よく知っている。大事なのはここから先、如何に素早くお題の品を手に入れゴールまで走るかだ。
当の本人はというと、髪を開いてすぐに目を見開き、何があったのか顔を赤らめて髪をグシャグシャと掻き毟り、けれどすぐに気を取り直したらしく、穂花ちゃんが声援を送るより早く私達がいる応援席まで走って来た。
「穂花! ハチマキ貸してくれ!」
穂花ちゃんの胸の前辺りに、パーにした右手の手のひらを上にした状態で差し出す。
「え。あっと、うん」
まさか自分に頼むとは思いもよらなかったのだろう。あたふたした彼女がハチマキを渡すと、互いの指先が触れ合った。
「悪い、サンキュ!」
空いている方の左手を振りながらゴールへと駆け出す律樹と、名残惜しそうにその後ろ姿を見送ったのち、慌てたように「ファ、ファイトー!」とありったけの声でエールを送った穂花ちゃん。これぞ青春。甘酸っぱい恋の匂い。羨ましくて胸焼けがする。

