「体育祭、ねぇ……」



黒板に書かれた競技一覧を、頬杖をついたお行儀の悪い姿勢で眺める。


「とりあえずパン食い競走は外せないでしょ。あとは借り物競争と……って、これどっちかしか出られないのか。別にいいじゃん両方出ても。あー、リレーどうすっかなぁ。でも最低二種目は出ないといけないしなー」


去年は確か、借り物競争と綱引きとリレーだった気がする。

少女漫画みたいに『好きな人』というお題が出たらどうしようと内心期待していたのだが、実際引いたのは『文庫本』と書かれた紙で、現実の不条理さを学んだ。

体育祭に文庫本を持ち込んでいる人がなかなか見つからなくて苦労した。


「穂花ちゃんはどうする?」

相変わらず斜め前に座っている穂花ちゃんの背中をつつく。何処ぞの担任様野郎の怠惰故、席替えは未だ成されていない。問題児集合の件といい、ちょっと職権乱用が過ぎるのではないか。仕事しろや片桐先生。


「うーん。私運動苦手だし、玉入れとかにしようかな」

「へー。応援だとかやんないの? チア似合いそうなのに」

「流石にちょっと恥ずかしい……」


ちぇ。