涙色に「またね」を乗せて

「そういえば、盆踊りはよかったの?」



喧騒と和太鼓の音を背負いながら鳥居を潜り、人気の無い石階段を登る。記憶の中よりも階段が急で、その所為か生い茂る木々の隙間から覗く街は中々に絶景だ。

「毎年踊ってたし、もう飽きた」

対する湊は暑さも相まってか額に薄く汗を滲ませ、この長く続く階段にげんなりしているようだった、しっかりしろよ、運動部。

「あっそ」

足元すら満足に照らせないような心もとない灯りの下、二人きりの花火に心惹かれたものの、一度くらいはあのやぐらの上で思い切り太鼓を叩いてみたい。とぼんやり考えてしまう罰当たりな私は、神隠しの対象だろうか。そう思いながら、最後の階段を登り終える。

恋を認めてしまったら、この心地いい日常も何もかもが変わってしまうのではないかと不安に苛まれもしたけれど、少なくとも私のドアホっぷりだけは健在で逆に安心した。

辿り着いた境内は静謐な雰囲気に包まれていて、神様を祀っている場所なだけあって何処か神聖さを感じさせた。


「そういえば、バケツとライターは?」

「バケツは確かトイレの近くにあった」

「確信犯め」



今更だけど、本当に花火なんかやって大丈夫だろうか。


万が一バレたら各方面からしこたま怒られるのは勿論のこと、神様の怒りを買って祟られそうだ。