涙色に「またね」を乗せて


「ねえねえ、そこのおねーさん」



嗚呼、どうしてこの世には顔面偏差値なるものが存在するのだろう。皆超絶美人かイケメンに生まれてくれば世界はもっと平和になるというのに。神様は何故顔立ちに優劣をつけたのだろう。ナンバーワンでオンリーワン。これでいいではないか。



「ねえ、聞いてる?」



というか、さっきから変な声が聞こえるんだが。何処の誰に対してかは知らないけれど、さっさと返事してやれよ。虐めはよくないよ。



「聞けよ!」



とんでもない力で腕を掴まれ、強引に視線を上げさせられる。


突然の痛みに顔を歪めながらも、知らず知らずのうちに起こっていた異常事態に戦慄した。



石段に座り込んでいた私の周囲を、男達が取り囲んでいたのだ。



大学生くらいだろうか。少なくとも、私よりは年上に見える。手錠かよとツッコミたくなる程の力で未だ腕を掴んでいる男はおっかない顔で眉を吊り上げ、その左右をニヤニヤと下卑た笑みを浮かべた男二人が取り囲んでいる。

中央の男は値踏みするように私の頭のてっぺんから爪先までーー主に顔と胸ーーをジロジロと眺め、そしてアリだとでも言わんばかりにその視線を粘ついたものへと変えた。


「ねーちゃん。中々可愛い顔してんじゃねえか」

「え、あっ、どうも」


途中で声がひっくり返った。本来なら恐怖に涙を浮かべ冷や汗の一つでもかいてみるところなのだろうが、どういう訳か脳の情報処理が追い付かず、結果的に素っ頓狂な間抜け面を晒してしまった。


「今一人〜? 一人で祭りは寂しいでしょ? どう、一緒に回ってあげてもいいよ?」

ちょうど右斜め前に立っている、ニヤニヤ顔の軽薄そうな男の言葉に、ようやく我が身に危機が迫っていることを察知する。