「やばい、喉乾いた死にそう」
露店巡りに熱中していた所為か、気が付けば喉はカラカラだ。さっきからまともな水分を取っていなかったので当然といえば当然か。休憩も兼ねて、冷えたラムネを購入する。
脇に設けられたテーブルに瓶を置いて、全体重を掛けて玉押しを一気に押し込む。ビー玉が落ちたからといってすぐに手を離さずに、泡が落ち着くまではこのまま押さえるのがコツだ。
ふと視線を遠くにやると、見慣れた人物に目がいった。咄嗟に湊の袖を引っ張り、意識を向こうに集中させる。
そこには、ピンクと水色の朝顔の浴衣を着た穂花ちゃんと、深緑の甚兵衛姿の律樹が並んで歩いていた。仲睦まじい様子の二人は正にお似合いのカップルで、その所為で余計にこちらの色気のなさが際立った。
一応は好きな人との二人きりの夏祭りなのに、これじゃあ男子中学生だ。高校生ともある者が、こんな調子でいいのだろうか。
空になった瓶を傾けると、カランと涼やかな音を立てた。提灯の光に透けるビー玉は、湊の瞳と同じ綺麗なアクアマリン。幼少期の頃は深海のようなブルーグレーで、確か無色透明だった時期もある。
色味の違うビー玉を並べて眺めるのは、道端に落ちていたBB弾すらも宝物だった当時の私には至福のひと時だった。
あの頃に比べると、環境も人間関係も随分と様変わりした。
昔の友人と疎遠になりまた新しい友達が出来、世界の汚さとそれでも穢れることのない崇高なものを知って、己を構成する要素が増えたり減ったりを繰り返す。その決して短くはない年月の中で梓さんは亡くなって、穂花ちゃんが現れた。
失ってはまた新しいものを得る。人生は、それの繰り返しのように思える。
何かを拾う度に何かを零すのが世の心理というのなら、ようやく花を咲かせた恋情は、一体何を犠牲にして成り立ったものなのだろう。

