涙色に「またね」を乗せて

袋に入れて貰ったスーパーボールをぽんぽんと弾ませ、そういえばまだ何も食べていなかったことにようやく気付く。


これはお祭りあるあるだが、こういった場において、ちゃんとした夕食を取る人はまず居ない。皆お腹が減ったら適当に食べ、栄養バランスについては責任を放棄する。要は、腹ごしらえが出来れば何でもいいのだ。


夏祭りにおける食べ物の種類は豊富かつ魅惑的で、どれをたべるか吟味するよりも目についたものを片っ端から胃に放り込んだ方がずっと手っ取り早い。それに、お祭りという名のスパイスがかけられた食べ物は、基本的にどれも美味しい。


そんな訳で、たまたま近くにあった綿菓子の黄色い屋台を見付け、ねじり鉢巻を巻いたおっちゃんから顔よりも大きな綿菓子を二つ買い、雲のようにふわふわなそれに思い切り齧りつく。



「でっか、これ食べ切れるかな」


口では文句を言いながらも、甘党の湊はすっかりご機嫌だ。


所詮は砂糖の塊なのに、ただのお菓子と形容するにはあまりにも甘美で、口にする度にうっとりと夢心地になっていく。

けれどそれは刹那の幻想。瞬く間に腹に収められ、またすぐに空腹に襲われる。

お察しの通り、綿菓子程度では祭りを満喫するには物足りない。逆に、綿菓子だけ食べて満足する人間は存在するのだろうか。

故に、私達は屋台を全制覇する勢いで食べ物を買い漁った。焼とうもろこしにかき氷、フランクフルトやチョコバナナとひたすらに食べ、いい感じにお腹が膨れてきたら射的や型抜きでカロリーを消費する。


色気もへったくれも無いが、食い気に勝る色気など存在しないというのが持論である。