涙色に「またね」を乗せて

ふと、湊がこちらを見ているのに気付く。いや、私の体を見ていると言った方が正しいだろう。何処見てんだ変態と罵るより先に、湊が口を開いた。



「やっぱりさ、その水着露出度高くない?」


ペットボトルを元の位置に戻しながら言い返す。


「当たり前じゃん。わざとそういうの選んだんだから」


いくら水着姿の人が大量に行き交っているとはいえ、年頃の乙女なら躊躇ってしまうようなデザインの水着。一緒に水着を買いに行った穂花ちゃんからも「涙衣ちゃん勇気あるねー」と驚愕の一言を頂いた。

しかし私はこの海水浴に向け、あの勉強会の日から血反吐を吐く程のダイエットに励んでいたのだ。その涙ぐましい努力が功を奏し、今の私は何を隠そうシンデレラ体重。

まぁどうせ夏休みが終わる頃には元に戻っているのだろうが、刹那の魔法にかけられた私は、世界中に水着姿を見せびらかしたいとさえ思っているのだ。

そういったことを年頃の乙女らしく大量のオブラートに包んで伝えると、


「ふーん」


と心底どうでもよさそうに言い残して、2人の元へと走り去ってしまった。んだよ、興味無いなら訊くなよ。

ビニールシートの上に座り、改めて海を一望する。

今は大勢の人で賑わっているこの景色も、日暮れの色が近付くにつれて幻想的なサンセットへと染まるのだろう。

絵の具であの複雑の色合いを表現するのは骨が折れるだろうなと思ってから、何を考えているんだと一人鼻で笑った。もう絵を描く機会なんて、二度と訪れやしないのに。

それでも、頭の中で何度も何度も筆を取っては、真っ白なキャンバスに色を重ねる様を思い描いてしまった。