『君』の代わり。


気付いたら

2駅歩いてた



朝日奈が

ありがと…って言ってくれたことだけが

救いだった



「朝日奈、大丈夫…?」



「うん…」



「朝日奈、まだ歩ける?」



「うん…」



「朝日奈、泣いてたら電車乗れないよ」



「うん…」



朝日奈、先輩のこと

まだ好きなの?



朝日奈、オレのこと

好きになってくれないよね?



朝日奈、オレと朝日奈って

間違っても

付き合うことなんてないよね?



朝日奈、オレがもしまた告白したら

朝日奈なんて言う?



朝日奈、オレがいなくなったりしたら

悲しいとか思う?



朝日奈…



「朝日奈、オレのこと…

朝日奈、オレと…

朝日奈、オレが…

朝日奈…」



全部

こわくて

聞けなかった



「なに…?星野…?」



「なんでもない…」



「星野…ありがと…」



「うん…
さっきも聞いた」



照れ隠しで

そう言った



「朝日奈、オレのこと…

嫌いじゃない?」



「うん…」



朝日奈が後ろから

オレのリュックのヒモに掴まった



なんか

それだけで

充分だった



バカなのは

女じゃなくて

男だろ



オレも

朝日奈が好きな先輩も

男はみんなバカだよ