愛した女の行方

「一人で来いっつっただろうが! 何仲間連れてんだコラァ!」

声を荒らげる先輩を、俺は間髪入れずにぶん殴った。

結貴にそうしろって言われたんだ。

「てめっ、たっちんに何してんだコラァ!」

もう一人の先輩が凄んだところで、結貴はテレビでよく見る謝罪会見のように深々と頭を下げた。

「ごめんなさい先輩! こいつ、ついてくるって聞かなくて……! 本当にごめんなさい! 明てめ馬鹿野郎! 先輩に何してんだ!」

はあ?! って思ったよ。お前が殴れって言ったんじゃないか。

……驚くことに、先輩たちは結貴を許した。というか、怒りの対象はすっかり俺に変わっていた。

「二度とこんな真似すんじゃねーぞコラァ!」

「はい! 本当にすみませんでした! ほら、明も!」

結貴は俺の後頭部を押さえつけた。

そのまま二人、先輩たちの姿が見えなくなるまで頭を下げ続けた。