周囲を見渡すと
希望が拓実の横に座っている。

(…拓実くん。)
そう言って真っ赤にした希望の顔を思い出す。

(希望ちゃん、ファイト!)
舞は心から念じた。

ふと目が合う舞と希望。
希望は小さくピースしてコクンと頷いた。

希望は周りのお皿を片付けてあげたり
料理の取り分けをしたりしている。
拓実も優しく希望を見ていた。

(希望ちゃんの優しさが伝わればいいね。)
舞は心の中で思った。

「克は…、あいつヘラヘラして。
舞、あっち行ってやんな。」

詩織が克と優香を見て、舞を肘でおした。

「行かないよ。幸せな空間て感じ。
あー、告白しようって決めたのに
自信失くすよね。」

舞が小声で詩織に言った。

「私、ブン殴ってやろうか?
舞のこと、弄ぶなって。」

「はは、その気持ちで充分…。」

と舞が言いかけた時
優香が克の耳に手をあてて何かを囁いている。

その後優香が席を立ち、後を追って
克も席を立った。

ドクンッ

自分の鼓動が脈打つのを感じた。
身体全体が指先まで冷たくなる感じ。

嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ

身体中がそう叫んでいるみたい。

舞の様子に気付いた詩織が

「…舞、私たちも外出る?」

と問いかけた。

「ううん。」

と首をふる舞。

(優香ちゃんと付き合うことになったら
どうしよう。少し考えるだけで凄く苦しい。)

舞の目には涙がたまっていた。

(やばい。どうしよう。
たったこれだけのことなのに、泣きそう。)

舞は目頭を押さえて、必死に耐えた。

「お肉食べよう。肉、肉。」

そう自分に言い聞かすように
舞は箸をとった。