「お兄さん、おじいちゃんの知り合いなの?」

「うん。知っている。風音と同じように、悪霊に襲われていたところを助けた」

颯は、そう言って微笑んだ。風音は、颯の言葉に驚くことしか出来ない。

「……風音、君のおじいちゃんは悪霊に殺された」

そう言って、颯は懐から風音が持っていた、風音の祖父からもらった扇子を取り出すと風音に差し出す。

(殺されたことは、知ってるよ……だって、僕のおじいちゃんは……僕の、目の前で殺されたんだから……)

そう思いながらも、風音は無言で扇子を見つめる。

「……風音なら、この風を操る力を使いこなせるだろう……この力で、悪霊を浄化してくれないかい?」

風音は颯から扇子を受け取ると、颯に目を移した。颯は、黒い羽織を風音の肩にかける。

「もし僕のところに来る時は、この羽織を羽織ってくるんだ。この屋敷の周りには、人間が近づけないように結界が張ってある……これを着れば、結界を抜けることが出来る」

「……」

風音は、手にある扇子を見つめた。それを見た颯は「外に出て、使い方を教えようか……付いてくるんだ」と言って、歩き始める。

風音は、颯の後を追いかけた。



あれから数日後の朝、風音は教室の席に座って、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

(……誰か、僕のことを見てる……?)

風音は誰かからの視線を感じ、顔をその方向へと向ける。