玉響なる風は鳴る

風音は片手で扇子を開くと、強く地面を蹴って空高く飛び上がる。そして、フェンスを飛び越えて空を飛び、悪霊のいる所へと向かった。

「……オレたちも行こう」

真冬の言葉に、葉月は頷くと階段を駆け下りると廊下を走り校庭へと向かう。

「間に合わない、か……」

開いた穴にぶら下がっている、悪霊に攻撃されそうなクラスメイトである男子の姿を見つけた風音は、風を起こすと男子を上に飛ばして悪霊の攻撃を回避させた。

風音は急いで男子の体を受け止めると、悪霊の攻撃を避けながら教室へと戻る。

「……大丈夫?」

男子を降ろし、風音は問いかけた。男子は驚きながらも「大丈夫だ」と返す。

「良かった……」

風音はそう返すと、教室に「風音!」と葉月が飛び込んできた。

「……葉月……?」

「こいつと、担任の先生以外誰もいなくて……」

「……それもそのはず。そういう結界だからね……颯が張ったのは」

風音の言葉に、葉月は首を傾げる。

「以前颯が教えてくれたんだけど、結界を張った者が指定したものを結界内とそっくりな亜空間に移す結界だからね……何重にも色んな結界を張るみたいなんだ……だから、颯に負担をかけさせる訳には行かない」

そう言って風音は開いた穴から飛び降りると地面に着地し、悪霊を見据えた。