「……お兄様。真実を話すなら、私が憑依しているこの子が目を覚ましてからの方が良いと思います……ただ、この子にとって受け入れがたい事実にはなると思いますが……それでも、私はこの子にも話した方が良いと思うのです」

そう言って、風音(志奈)はそっと自分の胸に手を当てる。

「大体の事情は察しました……なので、私はこの子の中で眠りにつきます。何かあれば、私を起こしてもらえばすぐに変わりますので」

風音(志奈)がそう言った瞬間、風音の体がぐらりと揺れ、倒れる風音を颯が支えた。

「……何が何だか良く分からないけど、久しぶりに風音の私っていう一人称を聞いた……」

真冬の言葉に、葉月は「え?」と首を傾げる。風音の両親も「確かに、久しぶりだ」と頷いた。

「そうか……葉月は、風音と仲良くなったの最近だっけ……風音、中学生までは女の子の格好してたんだよ」

「そうなの!?」

「制服もオレみたいにスカート穿いてたし、一人称も私だったし、髪も伸ばして結んでたし」

今の風音からは想像もつかないような事実に、葉月は呆然とする。

「風音には、本当に悪いことをしたわ……薄々風音がトランスジェンダーであることに気付いてはいたんだけど……確信が持てなくて……でも、風音が今通ってる高校を選んだ理由を話してくれた時に、風音がトランスジェンダーであると確信したんだ」