「…すみません。」
「すみませんじゃないわよ!
こんなことをして卵が潰れたら、
貴方弁償できる?
できないでしょう。
外国人だからこんなことも、
わからないわけ?」

女性が段々とヒートアップしてきたので、
鈴は自分のレジを一度止めて、
雨泽の元に駆けつけた。

「こんなこともわからないなら、
国に帰った方がいいんじゃない!
邪魔だし、目障りよ!
日本から出て行けば?」

彼女はその後も、
聞くに耐えない差別用語を、
ひとしきり喚いた後、
満足したのか、
鼻を鳴らして、足早に立ち去ろうとする。
雨泽は仕切りにすみません、
すみませんと縮こまっており、
あまりに見ていられない光景だった。

レジに入る時は、
袋が有料だから、
なるべく一つの袋に詰め込んでください。

雨泽は鈴の教えたことを、
律儀に守っただけだった。

店長は我関せず。
他の客も目を合わせずの状態であった。

「お客様、お待ちください。」