このボタンを押せば、
彼に繋がるはずだ。
どきどきと無性に胸が高鳴って、
緊張した。

「…喂?」
彼の低い声が聴こえて、
思わず飛び上がりそうになる。
部屋の中を意味もなく、
ぐるぐると歩き回った。

「あの、相原ですけど…。」
空気が抜けたような、
間抜けな声が出た。

「相原さん?」
「うん、そう…。」
携帯越しに騒がしい音が聞こえた。
何か大きなものが落ちたような音が、
どすんとしてから、
彼が声にならない叫びを上げる。

「だ、大丈夫?」
「少し、落ちただけです。」
どうやら動揺して、
ベッドから転がり落ちてしまったらしい。
怪我はないようで、胸を撫で下ろす。
 
「少し、会えないかな。」
言ってからはっとする。
こんな唐突に言われたって、
迷惑なだけだろう。

空いてる日ある?
私はいつでもいいんだけど、と、
ぼそぼそ頼りなげに、
付け加えた。

「今すぐ行きます!どこに行くべきですか?」
雨泽の落ち着かないドタバタとした、
慌てっぷりがわかって、
思わず笑みが漏れた。

「じゃあ、この間の公園で。
1時間後に。待ってるから。」