「掃除用具は、ロッカーの中。
シフト表は、
毎月休憩室の壁に貼り出されるから、
確認してください。

それから、
レジに入る時は、袋が有料だから、
なるべく一つの袋の中に、
商品を詰め込むようにして下さい。」

早速、店内を案内すると、
雨泽は困った顔のまま、
ひょこひょこと、
鈴の後を追ってきた。

二十代前半男性にしては、
やや童顔の彼は、
おどおどしていると、
余計に子供っぽく見える気がする。

しばらく雨泽と並んで歩いていると、
途中で、
床に大きな虫が居座っているのを、
発見した。

鈴は見て見ぬふりを決め込むと、
何事もなかったように、微笑む。
面倒ごとは嫌いだ、
他のスタッフが処理するだろうと、
目を逸らした。

そこで、気を取りして、
彼に話しかけることにする。

「宋さんは、どうしてこのアルバイト先を、選んだの。」