重苦しい空気をぶち壊すつもりなのか、それとも空気をただ読んでいないのか、明るい二つの声が響く。フィオナたちがドアの方に目を向ければ、そこには見知った顔の捜査官二人が立っていた。

「お前らが最近書類作業ばっかで全然調査しねぇから、わざわざ事件を持って来てやったぞ!」

髭を生やし、豪快に笑う四十代後半の男性の名前はフェリクス・ボタン。東洋人とのハーフで、パッと見ると明るくていいおじさんだ。しかし、捜査官として優秀でいくつもの何事件を解決に導いている。

「皆さん、おいしいハーブティーを同僚から貰ったのでよかったら飲んでください!」

ショートカットの髪を揺らし、無邪気に笑う童顔の女性の名前はモモ・グレンジャー。まだ警察官になって間もないのだが、並外れた身体能力とドライブテクニックが認められ、特殊捜査チームの存在を知る部署に配属され、フェリクスと共に事件を追っている。

「モモさん、ありがとうございます」

レイモンドがお茶をモモから受け取り、「俺が淹れます」とエヴァンが椅子から立ち上がる。サルビアはフェリクスに調べてほしい事件の資料を手渡され、顔を強張らせていた。あんなサルビアを見るのは初めてで、フィオナはジッと彼を観察する。