Tear Flowes〜We are losers〜

「……面白くなってきたな。心に火をつけてやろう」

男性はニヤリと笑い、サングラスを外す。そこにあったのは、恐ろしさを感じるほど深い黒い目だった。



ホテルでの潜入一日目を終え、フィオナとフリージアは報告をするために特殊捜査チームの部屋に向かっていた。

「今日は収穫はありませんでしたね」

「ああ、怪しいと思った人物は全員白だったしな」

そんなことを話しながら二人で歩く。フィオナが俯くと、「まあ、まだ一日目だしこんなもんだろ」とフリージアが頭に手を置いて少し雑に撫でた。その体温を感じていると、フィオナはあることを思い出し、口を開く。

「フリージアさん、シオンさんが亡くなった時、「泣いていい」と言ってくださってありがとうございました」

あの時からずっと言わなければいけないと思っていた。しかし、言うことが何故かできなかった言葉だ。きっと恐れていたのかもしれない。シオンのことを、責められるかもしれないとフィオナは心のどこかで怖がっていた。