ジリリリリリリッ

「ねーちゃん、速くおきろ。学校遅刻するよ。いいの?もういいや、知らねー。母さん。行ってきます。」

う、うるっさいなー。しずかにして、よ、
せっかくいい夢見てるのに

「いってらっしゃい、浩介。華っ、起きなさい。あなた今日、朝なんかあるんでしょ?」
「ないよぉ、おかーさん......え?今って、何時、」

今日ハ、ナンカアルッテイイマシタヨネ?

「7:36よ。」
あ。今日って確かあのメイクが濃くて有名な広島先生に呼び出されてた、気がする。
いや、呼び出されたな。確実に。
眠気がどんどん引いていく。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!人生死ぬって、今日命日だって!」
「うるさいっ!そんなこと言ってないではやくしたくなさい。時間は有限よ。」
いやいやいやいやいやっ!お母様!
広島先生、すぐ怒ってくる先生なんだよ!
嫌われてることで有名な広島先生のもとに行かなきゃ行けない理由?そんなの1つしかない。
私がなんかやらかした、ってこと⭐
とりあえず髪の毛セットして顔洗う。
「はい、スポーツドリンク。これ、ほんとは大会用だけど、今朝は仕方ないわ。これのみながら学校行ってきなさい」
「はーい!行ってきます」
やばいやばい、何かやらかしたとしたら生徒協議会の時に発言をミスったっていうかんじなんだけど、心当たりないんだよね。
あ、そういえば。
私、遅い時間に起きても遅刻にはならないんだった。
焦りすぎて忘れてたけどさ、私の通ってる高校、私の家の目の前だった。
このままダッシュで学校入って職員室へ行こう。
お母さんからもらったスポーツドリンクを飲み干して、
「すぅ、はぁ!坂下華、行きます」
そういって私は加速ダッシュをしたけど。
やばい、目の前に人いるか確認し忘れてた。
もういいや、そのまま進んじゃえ。
加速ダッシュは1回加速するとスピードがおちにくくなる。
だから、加速ダッシュを始めた今、前に人がいても加速ダッシュをやめることはできない。

ドンッ

「つっ~!誰だよ。朝っぱらから俺に体当たりしてくるバカは。」
あ、やっば。加速ダッシュどーのこーのって言ってる間に男の人に当たってしまった...。
「すいませんでしたっ」 
結構しっかりとした体つきで、多分運動してる人かな。顔も整っている。
まずい、一軍にタックルしたのか、私。
私の経験上、こういう人は100%一軍。
「...あ。お前、俺のマネージャーやんねぇ?」

...は?
知らない人にマネージャーをお願いする?
そんなことあるの?
第一、私はこの人のこと知らないしなにやってるのかも知らないのに。
「俺、陸上やってる。お前もそうだろ。全国大会100m1位、坂下華。」
「なんで私の名前知ってるの」
「俺。全国大会100m1位の村松翔。」
あ。
記憶のなかで、糸が繋がった。
「全国大会の表彰式の前に話した、あの漫画オタクの?」
村松翔。中学三年生の時に向風10.39で中学生最速になったこの人とは表彰式の前に少し話した。
その頃は、もうちょっとオーラがよかったのに...。
「一緒の高校だったんだ!じゃあ、翔くんも陸部?」
でも陸部に翔くんはいないはず。
私は帰宅部で、他のところで陸上やってるけど、陸部には一応入ってるんだよね。
もしかして帰宅部とかかな。
「俺、もう陸上はやってない。俺がお願いするのは『俳優、村上かけるのマネージャーになってくれ』ということだ。」
村上かけるって、あの超有名人?
そんなの嬉しすぎるよ...!でも。
「いい...っていうのは質問をしてからにする。」
そもそも、なんで私なのか。
タックルした私がなんでこんなことを言われるのか。
話の展開がはやすぎる。
しかも、村上かけるのマネージャーになったら、私は陸上をやめなくてはいけなくなる。
まあ、お母さんはいい、って言ってくれると思う。お父さんも。
だけど、謎が多いままで承諾するわけにはいかない。

キーンコーンカーンコーン

「うわっ、もうこんな時間!?華。詳しくは放課後な!これ俺のLINE。じゃ!」
はぁー。とりあえず不良とかじゃなくてよかったぁ。
あれ。でも、ちょっとまって。
さっき、「俺のマネージャーやんねぇ?」って言った?
もしかして、翔くん=かけるくん、とかある?
あの人気俳優かけるくんがやばいオーラ出まくりの翔くん...?
ま、あくまで可能性の話だし。
靴を履き変えて教室にいく。
「おっはー!華っ」
「うわぁっ。やめてよー、すーちゃん」
一ノ瀬すず。
私の幼稚園の頃からの友達で親友。