「ビジネスに貪欲だねぇ」

「ごめん、怒った?」

「ん?なんで?」

「俺たちの結婚式なのに仕事の話を持ち出したから。それにまだ母を説得できてない」

急に慌てふためいた様子で私の機嫌を伺うので、少し意地悪してやろうかという気持ちがムクムクとわき上がる。

少しトーンを落として潤くんを睨んだ。

「あー、うん、怒ってる。私のこと蔑ろにした罰を受けてもらおうか」

「何をしたらいい?」

「私たちの写真を富田屋のロケーション撮影の宣伝用に使いなさい」

「なぎがモデルなら何も問題ないな。問題ないどころか、綺麗すぎて困るくらいだ」

「あと、女将修行もするよ」

「えっ、本当に?無理しなくても……」

「無理なんてしてないよ。立派にこなしてお母さんに認めてもらうわ。臨むところじゃないの」

潤くんに頼ることは簡単だ。だけど受け身の私なんてらしくない。だってこの人と結婚するって決めたんだもの。逃げてたら何も始まらない。

決意を胸に、私は高らかと宣言したのだった。