「提案します。富田屋でフォトウェディングできないかな?」

久しぶりのデートでカフェに来た私たちは結婚の話を進めるべく、会えない時間にお互い考えてきた色々なアイデアを出し合っていた。

先日姫乃さんからアドバイスされたフォトウェディングを調べてみて、ロケーション撮影というものがあることを知った。

ロケーション撮影とは、屋外や街並み、歴史的建造物など、印象に残る背景の中で婚礼衣装を着て写真撮影をすることだ。

色打掛を着たい私にとって、歴史ある富田屋のあらゆるスポットは魅力的そのものだ。

「富田屋で?」

「うん。だって歴史ある建造物だし、お庭もすごく綺麗。館内もフオトスポットだらけじゃん」

私の提案に潤くんはしばし黙りこくる。さすがに無理なお願いかしらと思いつつも簡単には引き下がらないのが私だ。

「お客さんの邪魔にならない程度でいいからさぁ」

「いや、うん。そうだね、この機会に富田屋をフォトウェディングの撮影スポットとして提供するのも悪くないかも」

潤くんは何かを考え込むように一人うんうんと頷き、真剣そのものだ。きっと私とのフォトウェディングよりも富田屋の未来を考えているんだろう。少し寂しいけれど、それが逆に潤くんらしくて何だか安心する。