潤くんは私の手を取りふわりと両手で包む。優しくひと撫ですると私の顔を覗き込んだ。予想外の甘い視線にジンと痺れそうになる。

「俺はなぎと結婚したい。結婚しよう」

まさかのプロポーズに思わずポカンとしてしまう。い、いや、確かにさっき“まるで結婚するみたい”だと考えてしまったことは事実だけど、でもまさか潤くんからそうはっきりと言葉にされるとは思ってもみなかったから心の準備ができていない。

嬉しいようなくすぐったいような気持ちに胸がぐっと詰まった。

だけど簡単に頷く私ではないのだ。

「……潤くんさぁ、もっと段階追ったりムードのあるシチュエーションとか、あるじゃん?」

「それはわかってるけど、焦ってるんだよ」

「若いのに結婚焦ってるの?」

「違う。なぎが他のヤツに取られないように先手を打ってる。こんなに好きだと思える人は後にも先にもなぎしかいない。俺はなぎがいないとダメなんだ。なぎはどう思ってる?」

強気なのかと思えば不安げにお伺いを立てる、そのギャップがたまらなく愛おしい。私の答えは決まっているというのに。