年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

「そうだ、じゃあもし結婚したらなぎさちゃんは若女将になるってこと?」

「へ?いや、ならないし」

「でも老舗旅館なんでしょ。そういう世襲的なのあるんじゃないの?」

姫乃さんの素朴な疑問に、ハッとなった。

確かに、潤くんのお父さんもお母さんも富田屋で働いている。しかもお母さんは富田屋の女将だ。その息子の潤くんも富田屋で働き始めている。ゆくゆくは富田屋を継ぐのだろう。

そんな潤くんとお付き合いするということは簡単なものではないのかもしれない。私はもうアラサーだし、結婚も視野に入れている。この先順調にお付き合いをして結婚をという話になったら、私は富田屋を継ぐ潤くんの妻として、富田屋の若女将にならなくてはいけないのだろうか。

「……私としたことが浅はかだったわ」

これだから恋愛脳はダメなのだ。目先のことしか見えていない。もっと将来のことも考えて納得してから告白を受けるべきだった。と、反省しても後の祭りなのだが。

ま、何だかんだ潤くんのことが好きなことにかわりはないのだけれど。

「なぎさちゃん社交的だし、着物も似合うだろうし、女将なんてぴったりじゃない?」

「姫乃さんったら話が飛びすぎだよ。私は今の仕事辞めるつもりないし」

勝手に妄想を繰り広げる姫乃さんに、私は困って苦笑いをした。