「なぎさもそろそろ結婚相手探したらどう？潤くんみたいにお見合いでもいいと思うわよ」

「え？ああ、うん、そうだね」

結婚破棄されてから以前のように彼氏だなんだと騒がない私を母は不憫に思っていることは知っている。結婚破棄されたことを気にしてか、今まで結婚を急かすようなことは言わなかった。だけど本当は、両親共に私に結婚してほしいと思っていることは薄々感じている。だから潤くんのお見合いの話を皮切りに、私に探りを入れているのだろう。

両親の気持ちもわかるよ、わかる。兄も結婚したし次は妹の私の番。アラサー突入して結婚適齢期なのは重々承知だ。しかも働いているとはいえ実家暮らしで親のすねをかじっているのだから、心配になって当然だろう。

私だって結婚を考えないわけじゃない。純白のウェディングドレスや白無垢なんかにも憧れを抱くごく普通の女子なのだ。まわりの友達だって彼氏がいたり結婚したり、早い子なんて子供が二人いたりとか。別にまわりに合わせる気はないけど、私だっていつまでも一人でいたいと思っているわけではない。

今までの私だったら絶対に彼氏がいたのに……。

「……どれもこれも潤くんのせいだ」

私は鼻息荒く、母には聞こえない声でムスッと悪態をついた。