「な・ん・で・だ・よ!」

私はメッセージが表示された携帯の画面に向かって悪態をつく。あれだけ私に猛アプローチしておきながら、キスをしたのを最後に放置されている感が否めない。私のことを好きだと言っていたのは嘘だったのだろうか。

「はっはーん、あれか。釣った魚にエサはやらない的なアレだわ。なるほどね。あー、そういうことねー」

きっと忙しいのだろうということは推測できる。卒論だって書くの大変だったはずだし、松風での修行だって平行していた。向こうのアパートを引き払って地元で家探しに引っ越し、そして新たに富田屋で働き始める。

「うん、わかるよ。大変なことはわかる。だけどさぁ……」

私だって内定もらって働き始め、軌道に乗るまで結構時間がかかった。だから忙しいのはわかっているつもり。けれどそれを差し引いたとしても、一日くらいは私のために空けてくれてもいいじゃないか。

潤くんは私に会いたくないの?

「……いやいや、落ち着け私。何考えてるの。そもそも潤くんと付き合ってないし」

リビングのソファーを陣取りスマホ片手にゴロゴロとだらけていると、母がヌッと顔を出した。