年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

ロンドン市内で一番高いビル、ザ・シャードでディナータイムを過ごす。
高層階には展望台があるが、レストランがあるこの三十四階も十分高い位置にあって薄暗くなってきた夕方の街並みが綺麗に淡く光るのが見えた。

「ていうか、ドレスコードじゃないとダメなんて聞いてないし。手荷物検査があるとか聞いてないし。ラグジュアリーすぎてびっくりしたし」

先程から潤くんに対して文句ばかり言っている私は、ジーパンスニーカーからシックなワンピースに着替えさせられ、運ばれてきたおしゃれなカクテルをぐいっとイッキ飲みした。

「なぎ、すっごく可愛い。可愛すぎる」

「いや、そういうことを聞いてるんじゃないのよ」

私の文句に動じない潤くんは我が道を行く。

そもそも、いつも私のわがままに付き合ってばかりの潤くんが強引にホストファミリーの元に私を連れて行って紹介したところで何かおかしいと気づくべきだった。

やたらテンション高いお母さんが私をデパートへ連れ込み、早口の英語でワンピースとヒールのあるフォーマルなパンプスを試着しろと捲し立て(もうそこは完全にゼスチャーで読み取った)、勝手にお会計をしてしまったのだ。

完璧に聞き取れた英語は“Lovely”のみ。可愛いとか素敵とか、そんな意味で使われるのだが、言われたら“Thank You”と返すしかなくない?

そんなこんなでお姫様みたいに仕立て上げられた私は、これまた王子様のようにスーツでバッチリ決めた潤くんに連れられて、ホストファミリーのお父さんの運転する車でザ・シャードへ送り届けられた訳なのだが。