年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

家まで送ってもらう薄暗闇の車内、運転中の潤くんを横目でチラリと見やる。

まっすぐ前を見据えた横顔はあどけなさなんてこれっぽっちも感じられなくて、急に大人に見えてしまったことに驚きを隠せない。

なんで?
いつの間に?

ドキドキと鼓動が高鳴っていくのを感じて焦る。それをごまかすためにどうでもいい話をベラベラと喋り倒していつも通りのなぎさちゃんを演じた。

私の話を笑いながら楽しそうに聞いてくれる潤くんは、信号待ちのときなど時折こちらと目を合わせる。その視線はとんでもなく甘い。

「送ってくれてありがとう」

「うん。……なぎ」

名前を呼ぶと同時にそっと手を取られた。

「今日はありがとう。なぎのこと好きだって再認識した」

「こちらこそありがとう。潤くんがすごく大人になったなあって思った。お金も払って貰っちゃってどうお礼していいやら……」

「じゃあお礼もらうね」

そう言ったかと思うとふと手を持ち上げられ、指先に柔らかなキスが落とされた。

「…………」

「この手を離したくないけど」

「……勉強頑張ってね」

「また連絡するよ」

「……うん」

別に何か間違いがあったわけじゃない。アプローチされて嬉しくないわけがない。離れがたくなったのは本当は私の方だ。

でもそれをごまかしたのは自分。
なんでもないように振る舞ったのは自分。

なのになぜか失恋した気分になった。
こんなの、おかしいよ。