年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

そんな私の荒れた心なんて知らない潤くんは惜しげもなく甘い言葉を落とす。

「今日なぎに会えてよかった。俺また勉強頑張れそう」

「勤勉だね潤くんは」

「立派になって戻ってくるから、絶対待ってて。なぎに相応しい男になるよ」

「これ以上立派になってどうするのよ。十分すごいと思うけど」

にこっと微笑む潤くんが眩しすぎて直視できない。何なんだこの男は。会うたびに立派になっていくとか、聖人か何かなのか。

お会計は最後にまとめてフロントで、潤くんがささっとカードで支払ってしまった。結構な金額に私はビビる。いや、別に支払えないとかそういうことじゃない。まがりなりにも私だって社会人なんだから。そうじゃなくて、潤くんが何のためらいもなくカードで支払ってしまったことに驚きを隠せないのだ。

「ちょっと待って。私が払うから」

「いらないよ」

「何言ってるの。学生に払わせるわけにはいかないわ」

「気にしなくていい。学生だけど無収入じゃないから」

「でもアルバイト程度でしょ?」

いくら松風が高級老舗旅館で親のつてで働いているといっても、そんな高いお給料がもらえるとは思えない。

「株と不動産で収入があるから。学費も自分で払ってるよ」

「えっ!すごっ!」

「だから奢らせて。これくらいしかカッコつけられない」

「……十分だってば」

もう何も言うまい。
潤くんが急に大人に見えた。
もう私の知ってる幼い潤くんはここにはいないのだ。

いや、きっと最初からいなかった。京都で再会したときから、もう潤くんは立派な大人だった。私が気づかなかっただけ。