「プールはどこにあるの?」
「奥にあるよ。会員のみが使えるプールだからゆったりと過ごせると思う。屋内と屋外に1つずつ。まあ、レジャー施設みたいな大きなスライダーはないけど、小さいスライダーはあった気がする」
「ほんと?楽しみ!」
ランチを存分に堪能しながら大きなガラス窓から外を見る。青空に白い雲がよく映える、夏らしい良い天気だ。気温もなかなかに暑い、まさにプール日和。
更衣室で着替えてから出るとすでに潤くんが待っていてくれた。
「お待たせ。見て見て!新しく水着買ったんだよ~」
今日のために買った新しい水着。パープル花柄にホワイトレースがあしらわれていて、甘くなりすぎない大人っぽさと上品さも兼ね備えている。一目惚れして買ったから早く着たかったんだ。ラッシュガードの前ジッパーを開けてテンション高くお披露目すると、潤くんはほのかに頬を染め横を向いた。なんだよ、その乙女な反応は。私はニヤリと口角を上げる。
「どう?可愛い?ねえ?ねえ?」
潤くんのまわりをちょろちょろと回って目を合わそうとすると、大きなため息と共に肩をがしっとつかまれ動きを止められる。
「……なぎ、俺を誘ってるの?」
「潤くんったら私の体で欲情しちゃった?」
「当たり前だろ、今だって俺はなぎのことを抱きたい」
「若いからガツガツしてるねー」
「やっぱりプライベートビーチとか、プール貸し切りにすればよかった」
「は?」
「なぎの水着姿が可愛すぎて誰にも見せたくなくなる」
「プールに入ったら見えないから大丈夫よ。さあ、遊ぼう遊ぼう!」
笑ってごまかしたけど本当はドキドキしている。
茶化したのは私だけど、潤くんの気持ちが痛いほど伝わってきて胸が苦しくなった。こんな気持ち、まるで私も潤くんのことが好きみたいじゃないか。そうやってアプローチしてもらえることに悪い気はしないし、むしろ喜びを感じていたのかもしれない。
だけど私は自分の気持ちに蓋をした。
“好き”とか“嫌い”とか、そんな感情が芽生えてしまったら恋愛バカの私は後先考えずにすぐに傾倒してしまう。
考えなしのバカな恋愛はもうしない。
立派な大人なんだから、これからは上手く人生を乗り切っていくんだ。



