「……なんか、ごめんね。準備してもらったのに。ここのお店の料理美味しいって評判高いの。せっかくだからいただいて帰ろうよ。向こうの分は持ち帰りとかできないかな?それかお兄ちゃん夫婦呼ぶ?」

「なぎさ……」

「大丈夫大丈夫!びっくりしたけど何故かショックじゃないんだよね。私も本当に好きじゃなかったのかも。あはは」

軽く笑い飛ばしてみたものの、その日の料理の味はまったく覚えていない。両親に対して明るく喋りまくってた気がするけど何を話したか今となっては記憶にない。

本当はショックでたまらなくて悔しくてたまらなくて、後から涙が溢れてきて、それこそこの世の終わりくらいの気持ちだった。

お兄ちゃんが心配して電話をかけてくるし電話越しで義姉の姫乃さんが私よりも泣くもんだから、泣きたいのに泣けなくなってしまった。

ワンワンと心の底から泣くタイミングを逃したせいか、ずっと心が晴れないまま過ごしていた。

長期連休を前にしてこんなんじゃダメだとようやく自分を奮い立たせたところ。旅行会社でたくさんのパンフレットを漁り、どこに行こうか吟味する。うちの会社はカレンダー通りプラス土日と祝日の間は休暇奨励日となっている。もうこの際全部休暇にしてしまって、贅沢に連泊してしまおうか。

そんな野心を燃やしながら、私はこの長期連休、京都に傷心一人旅をすることを決意したのだった。

京都はパワースポットいっぱいあるし、荒んだ心を浄化しに行くんだ。