年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

平等院は京都府宇治市にある寺院で、十円玉にも描かれている有名な場所だ。鳳凰堂をバックにたくさんの観光客が写真を撮っている。

私も例に漏れず写真を撮ろうとしているのだが、なかなか上手くいかない。

「さっきから何やってるの?」

「いや、十円玉と並べて写真撮りたいんだけど、ピントが合わなくてさぁ」

「好きだね、そういうの」

「そうなのよ。どこまでも私は王道を進むのよ」

ああでもないこうでもないと試行錯誤する私の隣で、潤くんは飽きもせず時折クスクスと笑いながら写真に付き合ってくれる。

鳳凰堂の前には池があり、きれいな青空と朱色で立派な建物を鏡のように写し出していた。まるでそこにも別の世界があるかのようで幻想的だ。

「昔の人もこの景色を見てたと思うと感慨深いよね。現実逃避できそう」

ぼーっと眺めていると本当に水面の中へ吸い込まれてしまいそうな気分になる。あっちの世界では私は幸せな結婚をしたのだろうか。ううん、していてほしい。こっちの世界では散々だよ。

「なぎは……何で京都に来たんだ?」

「ん?旅行だよ」

「いや、そうじゃなくてさ。何かあった……?」

「……何もないけど?」

にこりと微笑んでみたが潤くんの顔は納得していないようだ。

突然何を言い出すんだ。
何を察したというんだ。

「あ、ほら、そろそろ拝観予約の時間じゃない?行こう。あとでお土産も見たいなぁ」

「無理すんなって」

歩き出した私の背後からため息まじりの、でも優しい声がふわっと包む。軽く頭をポンポンとされて、潤くんはそれ以上何も追及しなかった。

その優しさが余計に私の身に沁みた。