年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

「一泊二日?」

「ううん、四泊。連休まるっと」

「一人で?」

「そう。あ、でもここは一泊だけ。さすがに松風に四泊なんて贅沢は無理だった」

あっけらかんと言い放つ私に、潤くんは目を丸くする。

「いつも突拍子もないことをするのがなぎだけど、今回はさすがに驚いた」

「そうだよねー。私も自分の行動力に驚いてる」

「……彼氏と一緒じゃないんだね?」

「うん。別れたから。ねえ、この湯豆腐めっちゃ美味しいね」

「料理長こだわりの手作り豆腐」

確かに私は常に彼氏がいたことは認めるけど、今は彼氏の話はやめてほしい。ズキッと痛む胸が思ったよりも身に堪えてることを証明しているようだ。

「明日はどこに行くの?」

「嵐山の方巡るつもり」

「俺も行っていい?」

思わぬ申し出に豆腐がつるんと喉を滑っていった。清水寺周辺を散々連れ回したのに、明日も私に付き合ってくれるとか聖人か何かだろうか。

「……いいけど、明日は平日だから潤くん大学あるでしょう?」

潤くんは大学生だから一応授業のことを心配してあげたのに、彼は一瞬の逡巡のみですぐに答えを返す。

「一限だけ受けて、後で合流ってのは?」

「うん、わかった。でもいいの?私なんかに付き合ってさぁ」

「俺も京都のこと知りたいし、それにもっとなぎと一緒にいたいから」

「あ、うん、ありがとう。あ、お水ください」

「かしこまりました」

丁寧にお辞儀をして奥へ下がっていく。その後ろ姿を見送りながら、人知れず小さく息を吐き出した。

──なぎと一緒にいたいから

不意打ちはよくない。
本当は潤くんの言葉にめっちゃドキドキしている。こんなこと今までなかったのにどうしたというのか。

「……弱ってんのかなぁ、私」

窓から見える小さくライトアップされた中庭を眺めながら私はため息ひとつ、感傷に浸ったのだった。