年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

松風までちゃっかり潤くんに送ってもらってご満悦の私は、松風の風情漂う立派な門構えにうわあと思わず目を見張った。

「すごい……」

「立派な旅館だよな」

「建物だけで感動というか圧倒されるって、こういうことを言うんだね。この空気感、めちゃくちゃ好き」

中に入る前から松風の存在感に感嘆した。
静かな通りに面している松風は手入れが行き届いており、昔から来る者を魅了しているのだろう。

「なぎ、俺バイトに行くね。また後で」

「うん、今日は本当にありがとう。会えて嬉しかったよ」

急いでいたのか、潤くんは手をヒラヒラと振ったかと思うとすぐに走って行ってしまった。

思ったよりあっさりとした別れだ。「また会おうね!」「また連絡するよ」なんて女子だったらキャピキャピするだろうに、まあ男子なんてこんなものかな。

「……ん?潤くん、また後でって言った?」

先ほどの会話に違和感を覚えて私は首を傾げる。だがよく思い出せなくて私は振り返る。そこにはもう潤くんの姿はなくて、モヤモヤとした想いだけが残った。

「ま、いっか」

考えても埒があかない。私はすぐに気持ちを切り替え、ウキウキと松風の門をくぐったのだった。