ミリさんが強く僕の手を握る。その手に温もりなどないはずなのに、僕には何故か温かく感じたんだ。ミリさんの綺麗な目を見た瞬間、涙があふれた。

「もしも、死にたくなった時は思い出してほしいんだ。君の手術が成功した時、喜んでくれた人のこと。……その人たちにはさ、甘えてもいいんじゃないかな?」

夕日が見えなくなり、夜の世界が広がっていく。ミリさんの体を空から降ってきた白い光が包んでいった。もう、お別れの時間なんだ。

「ミリさん、ありがとう!!」

口から自然と言葉が出ていた。ミリさんはニコリと笑う。その瞳からは涙が出ていた。そして彼女の姿が白い光に包まれ、その光が空へと登って行った時、僕の心臓は彼女からもらったものなんだと胸に手を当てる。悲しくて、嬉しくて、色んな感情が入り混じって泣いてしまった。

泣きながら思ったんだ。彼女は、偽善者でもただクラスの中心にいて騒ぐだけの人でもない、本当に優しい人だってこと。