「祝 ピアノコンクール県大会優勝」
学校の垂れ幕にはそう書かれていた。
私は垂れ幕を見ながらぼーっとしていると、
「奏花ー!おーはよっ!」
と、後ろから声がかかった。
振り向くと私の親友の優里愛がいた。
「おはよう。優里愛。」
私がそう返すと優里愛は垂れ幕を見て、
「おー!奏花、垂れ幕!スゴいじゃん」
「そんなことないよ。」
「いやいや、県大会では負け無しでしょ?」
「…うん」
そんな会話をしながら教室へと向かった。
途中で私は優里愛にトイレに行くね。と言って、
誰も入らない旧校舎の音楽室に行った。
そこには、古めかしいピアノがぽつんと置いてあるだけだ。
ピアノの椅子に座って、窓の雲をぼーっと眺める。
こうしている時、なにも考えないで居られる。
私が私でいられる場所だ。