「デカぁ.....」
柚兄、今までこんなとこに通ってたのか。
羨ましいな、おい。
「仁様っ」
「今日もお疲れ様です」
仁様ぁ?!
え、そういうのって女子たちが言う言葉じゃね?
てか、仁か.....どこかで聞いたことがあるような....どこだっけ。
前に喧嘩した時、いたような気がする。
私、今の所負けなしだから、相手が負けたのは確か。
だとしたら、更生するか、どこかの正統派の族に所属しているはず。
慕われているのを見ると、族に入っていてそれなりの立場ってことだな。
........全く、思い出せん。
「おいっ、お前っ」
耳元でデカい声で叫ばれる。
耳元で叫んじゃだめって習わなかったのかな。
「仁様のお言葉を無視するのか?」
無視、してましたっけ。
何も聞こえなかったけど。
「うるせぇ」
おっと、言っちゃた。
「仁様に向かって、どういう口の聞き方をしているっ」
何なの、マジでウザいんだけど。
はぁ....... これだから嫌なんだよ。
一定の人間を神のように扱う奴ら。
っていうか、仁様ってどいつ?
ざっと、話しかけてきた奴らの顔を見回す。
あ、多分アイツかな。
絶対、アイツだな。
オーラがちげぇじゃん。
ふむ、イケメン?だな。
イケメンというか、美人系か。
男であんな顔をしていて良いのか。
取り敢えず、そいつに近付いた。
ゾクッ
思わず、頬が緩みそうになる。
あぁ、強い。
間違いなく、強い。
体の奥が疼いた。
〝喧嘩したい〟
頭の中にそんな言葉が響く。
我慢しないと。
暴れたら、迷惑がかかる。
「お前か、編入生は」
ジトリと上から下まで見られる。
そして、鼻で笑われた。
「裏口入学か......」
言うだけ、言えばいい。
反論する価値もない。
「まぁいい。すぐにいなくなるだろう」
性格、捻くれてんな。
何の権限があってそんなことを言うんだろ。
「俺は、副会長の九条仁。5年だ」
先輩か。
関係ないけどな。
「僕は、鳳凰美夜です。よろしくお願いします、九条先輩」
貼り付けたような愛想笑いを浮かべた。
慣れた、な。
昔よりは。
「鳳凰美夜?」
「はい」
何だよ、人の名前読み返して。
「柚.......鳳凰柚の弟か」
「はい、双子の弟でございます」
妹だけどね。
「そうか、裏口入学ではなさそうだな」
ふむ、柚兄ってそれなりの立場が上なんだな。
信頼性が高い。
「美夜、では理事長室に向おう」
え、嫌なんだけど。
私、ここの理事長、苦手なのに........
