ハァッ…!ハァッ…!ハァッ…!

私は走ってる…息はとっくにキレて
足は限界に近い…それでも走る、走り続ける

止まったら捕まるから、捕まったらどうなってしまうのかなんて、考えたら恐怖で動けなくなってしまうから、疲れきった足に鞭を入れ、ただ我武者羅に走り続ける。

あぁ…でも…もう、すぐ後ろに来てる…なんで?!どうして私なの?!怖い!怖い!あまりの恐怖に頭がおかしくなりそうだ!そんなことを思ってる間に、私の足は私の意志とは関係なしに、走ることを辞めてしまった…。
なんで?!止まってる場合じゃないだろ!早く立て!走れ!逃げろ!どんなに頭で思っても、私の足は、体は、私の言うことなんて聞いてはくれなかった…。

私が何をしたっていうの?私になんの恨みがあるの?どうしてどうしてどうして?声に出したいのに、何故か言葉にならない、なってくれない。

「つかまぇたぁ」

すぐ後ろから気味の悪い声が響く…怖くて、少しでも意識を逸らしていたくて、私は目をつぶった…。

「もう逃がさないからね?」

何かは私の耳元で囁く、体に2本の腕が絡みつく…。
バチッっとなにかの音を最後に私の意識は途切れた。

ふと目が覚めた。私はベットの上に寝かされていた。誰のベットかなんて考えなくても分かる。あぁ…捕まってしまった…もう逃げられない…。

そんなことを考えていると、ドアノブが、ガチャりと音を立てて何かが入って来た。何か?いや違う、この人は…。

「やぁ。目が覚めたかい?」

「どうして私なんですか?もうこんなこと辞めてください…お願いだから家に帰してください…お願いだから…」

「どうして?君はここで僕にずぅっと愛されていればいいんだ。そして僕も君に愛されていればいい。素晴らしいと思わないかい?」

「お義兄さん…どうしてなんですか…?どうしてこんなことになっちゃったんですか…お姉ちゃんのことはもう、どうでもいいんですか…?」

「君が僕の前に現れたからいけないんだ。君が僕から逃げようとしたからいけないんだ。君のお姉ちゃんだって、愛していたよ?君に会うまではね、でも僕は君はを愛してしまったんだ。だからこれからはずっと一緒だ。ずっとずっと一緒だよ」

彼は笑う、楽しそうに、嬉しそうに、壊れたように笑い続ける。私はこれからどうなってしまうのだろう…決して逃れられない鳥籠の中で、私も笑いが込み上げて来て、壊れたように笑い続けた。